京都大学 工学研究科 情報工学専攻
計算機工学講座 計算機構成分野 (富田研究室)

並列応用を指向した分散システム Computer Colony

我々は, 複数の独立した計算機が必要に応じて群(コロニー)を形成し, それらがあたかも単一の計算機であるかのようなイメージ(Single System Image:SSI) を提供することで従来のSMPシステムの操作性に匹敵する計算機環境を実現する コンピュータ・コロニーの研究を行っている. 「ネットワークの向こうにある無尽蔵の計算資源を, その物理的な構成を意識 せずに自由に使いこなせる計算機環境」がコンピュータ・コロニーの理想である.

我々はこの目的を達成するために必要な共有メモリ環境を効率的に実現する ハードウェアと, プログラミングフェースとして従来のSMPシステムでの タスク-スレッド・モデルを拡張したミッション-ユニット・モデルの基礎的な 研究を行ってきた. 平成12年度の主な研究成果は以下の通りである.

負荷分散機構の実装と評価
複数計算機間での細粒度動的負荷分散を実現するグローバル・ スケジューラの戦略を決定する際に必要なシステムパラメータを同定するため, 負荷分散機構において実質的な作業を行うユニット移送機構, ホームページ移送 機構の開発を行った.
ユニット移送機構の開発
共有メモリ環境であることを活用し, ユニット移送時には必要最低限の 情報のみを移送することで, 移送を決定後から移送先での実行再開まで の時間を短縮する基本プロトコルを設計し, それに基づいてたナイーブ な実装を行った. その結果, 移送先でのオンデマンドなメモリ領域確 保/割り当ての時間がユニット移送において極めて問題であることが判 明した. そこで, ユニット移送機構自身が独自に管理するメモリ領域を 一定量だけ予め割り当てる実装方式を提案した. さたに, 一旦移送され たユニットが再び移送前のノードに戻ってくる場合に, 過去の履歴を利 用することで不必要なデータの移送を軽減する差分移送方式を提案し, 具体的な実装方法について検討を行った.
ホームページ移送機構の開発
ユニットの移送に伴うホームページの移送ならびに, 実行されるプロ グラムの振る舞いに応じて, プログラムから明示的/非明示的にホー ムページを移送するための基本プロトコルを作成しその実装を行った. 頻繁に利用され, かつ, タイミングがクリティカルな一部機能を専用 の通信ハードウェアの機能を利用して実装することで, プロトコルプ ロセッサの負担を大きく軽減できることを確認した.
共有メモリ環境を提供する通信ハードウェア上のプロトコル開発
平成10年度からの基盤研究の成果として作成したネットワーク・インタフェー ス・カード上に搭載されたFPGAの詳細設計を行った. 具体的には, 共有メモ リの一貫性制御を支援するプロトコルプロセッサインタフェース, ワークス テーションに実装するためのバスインタフェース, 1Gpbs の光接続部の基本 インタフェースを設計した. この通信ハードウェアを, ワークステーション 上のプログラムの仮想アドレスにマッピングし, 2台のワークステーション間 で光接続により通信を行うためのプロトタイプハードウェア環境を構築した. その結果, 光接続部におけるデータの誤り率が予想以上に高いことが判明し, その原因の解析ならびにこの問題を回避するプロトコルの検討に着手した.

Last modified: Fri Mar 2 12:00:58 JST 2001
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