本年度は、SPARC ABIに従ったプログラムの関数単位の値再利用および事前実行値再利用について研究を行った。
研究の結果、値再利用を用いることによって、プログラムを高速化できることが分かった。しかし、一度実行した結果を再利用するだけの値再利用では高速化できないプログラムも存在した。
そこでわれわれは、Stride-based予測に基づく事前実行を組み合わせることによって、これらのプログラムの高速化を図った。事前実行を組み合わせることによって、単純な値再利用では高速化できなかったいくつかのプログラムの高速化に成功した。しかし、事前実行を用いない場合より遅くなるプログラムもあった。
また、これらの技術によって削減されたサイクル数はStanfordベンチマークでは最大70%、SPEC CINT95ベンチマークでは最大30%であった。
今後は、Stride-based予測以外の予測を用いて事前実行の効果を上げることができるか。事前実行によって遅くなるプログラムについて、いかにして事前実行を停止するか。また、高速な値再利用を実現するために、再利用表をどのように設計するか。について研究していく。