我々はボリュームレンダリング専用並列計算機ReVolver/C40を開発してきた。ReVolver/C40ではボリュームレンダリングを、視線生成ステージ(RayCasting Stage:RCS)、ピクセル値計算ステージ(PixelCalculation Stage:PCS)、シェーディングステージ(Shading Stage:SS)の3つのステージに分け、それぞれ専用基盤を設計・実装することで、高速に実行している。現在、ReVolver/C40の開発はハードウェア・ソフトウェア共ほぼ終了している。
ReVolver/C40を含めたこれまでの可視化システムは、医療機器やシミュレーションなどで得られたデータの解析を対象としており、一つのデータに対して複数回可視化を行うことを目的としたシステムであった。近年では、可視化システムにはこれまでの目的に加えて、時間変化するデータを一定間隔で可視化する機能(リアルタイム可視化)が切望されている。
我々は、ReVolver/C40のデータサイズに対してスケーラブルなアーキテクチャを利用し、さらにReVolver/C40を実装することで得られた知見を応用したボリュームデータへのアクセスの局所性を利用した高速化手法と、ボリュームデータの性質や視覚特性を利用したEarly Ray Termination等の様々な高速化手法を利用することで、大規模なデータのリアルタイム可視化を行うシステムの開発を目指している。
本年度はPCクラスタと可視化専用ボードを用いることで、4000^3のボリュームデータの30fpsでの可視化と、各PCで行っているシミュレーションのリアルタイム可視化を実現する新システムを提案し、ReVolver/C40の部品であるPCSとPCクラスタを用いてそのプロトタイプを実装した。プロトタイプはPC4台とPCS4枚とPCのPCIバスに挿す通信ボードで構成されており、ボリュームデータを各PCから各PCSへボードを介して並列に転送することができる。結果、これまで19.8秒かかっていた転送を4.95秒で行うことができるようになった。
今後は、このプロトタイプを用いて、新システムの実装に向け様々な評価を行う。