3次元空間に存在する物体を、単位立方体(ボクセルと呼ぶ)の集まり で構成されていると考え、この空間をボリュームデータのまま2次元のスクリーンに 投影することによって、情報の可視化を行う技法をボリュームレンダリングと呼ぶ。 ボリュームレンダリングでは、 内部情報を持つデータの可視化が行えることから、物体の表面だけでなく、その内 部や背後の状況も画像として表現することができる。 そのため、医療分野における 人体データの可視化、構造解析や流体計算をはじめとする科学技術計算の結果の可視化 などの手段として重要視されている。 この手法の実現には元来、膨大なデータを記憶しておく ための記憶容量と多大な計算量が必要であった。そのため当研究室では専用並列 計算機ReVolver/C40 を開発することによって、この問題に対処することを考えた。
ボリュームレンダリング処理は、 3次元のボリュームデータを2次元に射影する画像生成処理と、 その射影結果に陰影をつけるシェーディング処理に分けられる。 ReVolver/C40 ではこれらの処理を 視線生成ステージ(Ray Casting Stage:RCS)、ピクセル値計算ステージ (Pixel Calculation Stage:PCS)、シェーディングステージ(Shading Stage:SS)、 と呼ばれる3つのステージで行なっている。 視線生成ステージでは、視点からスクリーン上の ピクセルを通る視線に関するデータを生成している。 ピクセル値計算ステージでは視線生成ステージで 生成された視線に関するデータをもとにボクセルの値を読み出し、 ピクセルの透明度やRGB値を求める。シェーディングステージ ではピクセル値計算ステージで生成された画像に陰影をつけ、現実感のある 画像をCRTに出力する。 またReVolver/C40 全体の制御はシステムコントロールユニット (System Control Unit:SCU)が行っており、 ホストマシンから送られたコマンド/データに従って、各ステージへのデータや プログラムの転送を行っている。ReVolver/C40 とユーザのインタフェースをとるのも システムコントロールの役目である。
以下に, ReVolver/C40 の概略構成図とその実装形態, ならびに試作した各基板の図を示す.
ReVolver/C40 では内部動作周波数50MHz の DSP(TI社 TMS320C40)を PE として使用して おり, プロトタイプシステムは 8PE構成のRCS, 128PE構成のPCS, 16PE構成のSSが 目標である. なお, 現時点(2000年1月)では以下の2つの構成で動作が可能である.
PCSのPE数がNの場合, N^3 のボリュームデータがReVolver/C40の標準負荷であるが, 各PEの主記憶容量に余裕を設けている為, ReVolver/C40-demo が表示できる 最大ボリュームサイズは 256^3 である. この時, 画面サイズを 256^2 とすると 0.29フレーム/秒の描画性能が実測された. この数字はReVolver/C40の標準負荷の 約8倍の計算負荷をかけた場合の数値であり, ReVolver/C40の標準負荷に換算すると 2.37フレーム/秒に相当する. また, ReVolver/C40-mini での実験から, ボクセル値プリロード機能を使用すると約2.5倍の性能が得られることが分っており, これらの値から ReVolver/C40 の標準負荷での性能は, 画面サイズを 256^2 とすると 5.93フレーム/秒となることが推測できる.
汎用のワークステーション(Sun UltraSPRCII 300MHz, 2MB Cache, 主記憶1GB)を 用いて画面サイズ128^2, ボリュームサイズ128^3 voxel でピクセル値計算部分のみの 計算を行わせたところ, 画面生成速度は0.83frames/s となり, ReVolver/C40-mini の計測データに基づく比較を行なうと, ReVolver/C40 プロトタイプの性能が同WSの約15倍の性能であることが確認できた.
$Id: index.html,v 1.6 2005/09/07 06:28:27 sinomoto Exp $
